【①と②ではどっちの方が多いのか】
②の解除権留保型の方が多いです。②はさらに「審査中に解除期限が経過した場合、売主から解除の申立てがなければ、特約期限を審査終了まで延長出来るものとする」と書いてある場合や、その記載はなくても、実務上はローンに時間がかかりそうならば、売主さんと協議の上、合意書を交わして特約期限を延長してもらう事は珍しくありません。
なぜなら、ローンは1社のみで審査をすることはむしろ少なく、買主さん的には希望する銀行がダメでも、他で通るならチャレンジしたいし、売主さん的にも他を当たって貰って通るなら、多少特約期間を延長してでもローン解約になるよりはましだと思っているので、②の方がお互いに利害が一致しやすいと言えます。
【②の解除権留保型で注意すべき点その1】
②の場合、買主さんが敗者復活戦や延長戦を希望する場合、必ず特約期限が来る前に売主さんに特約期限延長を申し出る必要があります。通常は仲介会社が間に入って売主さんに交渉しますが、もし売主さんが延長を希望しない場合は、延長の意思表示も、解除の意思表示もしないまま、うっかり特約期限を過ぎてしまうと、買主さんはローン特約による白紙解約と手付金返還を受ける権利がなくなってしまいます。
そうなると、買主さんは手付金を放棄して手付解約するしかなくなり、最悪の場合、違約金を支払わなければならない場合もあります。解除の意思表示は、仲介会社にただ口頭で言うだけでは後々トラブルになりやすいので、売主さんに内容証明かFAXなどで書面に残しましょう。
【②の解除権留保型で注意すべき点その2】
特約期限内に承認が必要なのは「事前審査」の承認ではありません。「正式審査」の承認です。事前審査は通っていても、正式審査の承認が間に合わない場合、契約を進めたいなら売主さんに特約期限延長をお願いするしかありません。ただし、買主さんは特約で守られる以上は、信義誠実に審査を進める義務があります。買主さんが速やかに書類を提出しなかったり、明らかに審査に非協力的だと判断されると、意図的にローン特約を悪用して白紙解約に持ち込む「ローン壊し」と判断され、手付金の返金が受けらない可能性がありますので、書類の提出は出来るだけ早く進めるようにしましょう。
【②の解除権留保型で注意すべき点その3】
平成31年の判例では、ローン特約期限内に事前審査は通っていたが、正式審査の承認が間に合わなかったケースで、買主さんからのローン特約による白紙解約の申出を認め、手付金が返還されました。このケースでは、買主さんは、きちんとやるべきことはやったが間に合わなかったと判断されました。②の解除権留保型でも意図的ではなく、きちんと書類を提出したにも関わらず間に合わなかった場合、買主さんが延長戦を希望しない場合も白紙解除になるのです。仲介会社としてもローン解約は避けたいところなので、売主さんに相談して、予めローンの正式承認に時間がかかりそうな買主さんの場合、特約を通常より長めに設定してもらう努力も必要です。
【②の解除権留保型で注意すべき点その4】
ローン特約期間は、契約前に事前審査が通っているならば、通常2週間くらいで設定します。新築の完成済み物件を契約した場合、通常引き渡し時期は契約から1ヵ月後なので、契約から2週間以内に正式なローンを通して、すぐに建物の表題(表示)登記に進み、引渡しの約1週間前くらいに表題登記が完了してくるイメージです。未完成物件で引渡しが1ヵ月以上先であれば、売主さんも気持ちに少し余裕があるので、ローン特約は少し長めに設定させて貰える場合があります。事前審査の段階で金利優遇は分かるのですが、例えば完成物件を契約して、1社は既に事前審査が通っているにも関わらず正式審査はすぐ出さずに、買主さんの希望で少しでも金利優遇の良い銀行を探したいために特約延長を希望する申出には売主さんは納得しません。まずは特約期限に間に合うように、最低1社は正式審査の承認を進めましょう。決済がずれ込まなければ、後から承認された銀行に変更は可能です。
【②の解除権留保型で注意すべき点その5】
ローン特約については、重要事項説明書や売買契約書には予め金融機関名と借入希望額、金利、借入期間を書く欄があります。金融機関に関しては、その他の金融機関も買主の希望があれば斡旋しますとなっている場合が多く、他に当たれる余地はあります。売主さん的にはどこでもいいから1つ通して欲しいのが本音でしょうが、記載してある銀行が否決だった場合は、買主さんが他の金融機関を希望しない場合は、ローン解約は認められるでしょう。また、金利については、平成16年の判例では、買主さんは金利が高いノンバンクも使うべきとする売主さんの申出は却下されていますが、審査の結果、想定した金利優遇との多少の差を理由に解約するのは難しいでしょう。期間は、平成9年の判例で、期間を70歳までとする申込が否決され、75歳で申し込むべきだとする売主さんの主張が却下されています。
【②の解除権留保型で注意すべき点その6】
一般的な住宅ローン特約は、消費者保護が目的なので、判例でも売主さん寄りの都合や主張は認められにくい傾向があります。しかし、買主さんが契約後に転職や退職や離婚をしたり、新規の借入を作るなどして意図的にローンが否決される理由を作った場合は別です。そのため、年間分譲棟数が多いパワービルダーさんとの契約などでは特に、独自の書式で「ローン特約に関する申出書」等を用いて、過去の借入の延滞や、税金の滞納、健康状態や、第三者の保証人になっていないかなどを買主さんに告知してもらい、虚偽の申告があって、それにより否決となった場合は、ローン解約の対象にならないとしています。また、通常の団体信用生命保険は通っているのに、買主さんの希望でその他の疾病特約を希望したが、否決された場合は、疾病特約はあくまでオプションなので、解約理由にはならないでしょう。
解除権留保型では、審査が否決ではなく減額の回答だった場合、買主さんは解約することもできますが、もしその足りない分を親が援助するなどして工面できる場合は、解約はしないという選択肢ももちろんあります。ちなみに承認された金額は、金銭消費貸借契約締結前であれば減額することは可能ですので、最初は余裕を見て少し多めに特約金額は設定した方が良いでしょう。