【敷地面積の細分化規制とは】
「建て詰まり」と言って、どんどん敷地を細分化して小さい戸建をたくさん建てる事で、以下のような問題が起きます。
①家が密集して圧迫感が生まれ、景観も悪くなる
②延焼など防災上のリスクが高まる
③日照・通風が取りづらくなる
④相隣の騒音・プライバシーが確保がしにくい
⑤快適な居住面積を確保できない
⑥敷地が狭いため、階段が急こう配になり、間取りも使い辛くなる
⑦北側斜線を避ける為、浸水に弱い半地下が増える
こうした建て詰まりを防ぐため、各自治体によって、200㎡を超えない範囲で、複数の住宅を建てるために敷地の分割を行う際の敷地面積の最低限度を決めることを細分化規制と言います。業者間では平米規制と呼ぶことが多いです。
【ミニ開発とは】
市街化区域内で1,000㎡以上(三大都市圏は500㎡以上)の土地の区画形質の変更を行うには開発許可が必要です。開発許可申請は手続きに手間と時間がかかる上、開発現場の敷地面積の最低限度はたいてい100㎡以上とされることが多いです。ミニ開発とは、開発許可申請が要らない大きさで宅建業者等が宅地を細かく分割して多棟現場の分譲を行うことを言います。ミニ開発は、たいてい敷地面積が50㎡前後くらいの小さい敷地に分割することが多く、結果的に建て詰まりを生む原因となりました。
【宅建業者としてはあまり嬉しくない細分化規制】
宅建業者に大きめの土地の情報が入ると、まず最初に細分化規制があるエリアかを
チェックし、どういう形の区割りで、幾つに割れるかを検討します。
特に、3階建が建てられるような、建ぺい率が60%、容積率が200%のエリアは、なるべく小さく割ってたくさん建てられる方が宅建業者的には利益率が高くなる場合が多いので、細分化規制は業者にはあまり有難くないルールと言えます。
細分化規制が導入されると、敷地が大きくなる分、1区画あたりの売値も高くなります。個人の買主さんにとっても、土地が高い都心部では、小さく割って1棟あたりの販売価格を抑えてあげる方が、ローンも組み易く、手が届き易いとも言えます。
【東京23区の細分化規制の導入状況】
【平成16年6月から細分化規制を導入した区】
◎杉並区
◎中野区
◎江戸川区
◎目黒区(低層住専のみ、全域は平成21年3月から)
◎世田谷区(低層住専のみ、全域は平成31年4月から)
【平成20年3月から細分化規制を導入した区】
◎練馬区
【平成27年3月から細分化規制を導入した区】
◎板橋区
【令和3年から細分化規制を導入した区】
◎荒川区
細分化規制の内容や導入時期は、自治体によって様々で、用途地域毎に分ける場合、建ぺい率毎に分ける場合、一律で規制をかける場合があります。まだ導入していない自治体もあります。
【細分化規制は地区計画で定める事が多い】
特定のエリアを限定して「地区計画」を定める場合、地区計画のルールの中に「敷地面積の最低限度」を定める場合が多いです。東京23区で言えば、区全体としては細分化規制の導入はしていない区でも、地区計画のエリアだけは個別に細分化規制をかけている場所がたくさんあります。元々細分化規制が入っている場所に、地区計画が定められる場合、地区計画のルールの方が厳しければ、そちらが優先されます。
【細分化規制の幾つかの例外】
細分化規制の目的はゆとりある住宅地形成のための建て詰まり防止なので、商業系の用途地域は規制がかからない場合が多いです。敷地の一部が都市計画道路などの公共事業に買収された結果、残った面積が細分化規制を下回る場合は、残地部分にそのまま再建築することは認められます。敷地の周囲に広い公園、広場、道路などの空地を有する建築物であって、市街地の環境を害する恐れが無いと判断されるものや、町内会用の倉庫など、用途又は構造上やむを得ないと判断されるものは、許可を受けることより面積の制限が緩和されます。